Gitを使い始めたばかりの方にとって、git pullとgit cloneは似ているようで混乱しやすいコマンドです。この記事では、両者の違いと正しい使い分け方を詳しく解説します。
git cloneとは?
git cloneは、リモートリポジトリを丸ごとコピーして、ローカル環境に新しく作成するコマンドです。
git cloneの特徴
- リモートリポジトリの全履歴を含めてダウンロードする
- 新しいディレクトリが自動的に作成される
.gitディレクトリ(リポジトリの管理情報)も含めてすべて取得される- リモートリポジトリへの接続情報(origin)が自動的に設定される
- デフォルトブランチが自動的にチェックアウトされる
git cloneの基本的な使い方
# 基本形
git clone <リポジトリのURL>
# 例:GitHubからクローン
git clone https://github.com/<ユーザー名>/<リポジトリ名>.git
# ディレクトリ名を指定してクローン
git clone https://github.com/<ユーザー名>/<リポジトリ名>.git <ディレクトリ名>
# 特定のブランチをクローン
git clone -b develop https://github.com/<ユーザー名>/<リポジトリ名>.git
git cloneを使うべき場面
- プロジェクトに初めて参加するとき
- チームの既存プロジェクトに参加する場合
- コードレビューのためにリポジトリを取得する場合
- 新しいマシンで開発を始めるとき
- PCを買い替えたとき
- 別の作業環境をセットアップするとき
- オープンソースプロジェクトに貢献するとき
- GitHubで見つけたプロジェクトをフォークして開発する場合
- 他人のコードを参考にしたい場合
- バックアップや保管目的
- リポジトリのローカルコピーを作成したい場合
git pullとは?
git pullは、既にローカルに存在するリポジトリを、リモートの最新状態に更新するコマンドです。
git pullの特徴
- リモートの最新変更を取得する
- 取得した変更を現在のブランチに自動的にマージする
- 実質的には
git fetch+git mergeを一度に実行している - 既存のローカルリポジトリ内で実行する必要がある
- コンフリクトが発生する可能性がある
git pullの基本的な使い方
# 基本形(現在のブランチを更新)
git pull
# リモート名とブランチ名を指定
git pull origin main
# リベースしながら取得(マージコミットを作らない)
git pull --rebase
# すべてのリモート追跡ブランチを更新
git pull --all
git pullを使うべき場面
- チームメンバーの変更を取り込むとき
- 他のメンバーがプッシュした変更を取得する
- 作業を始める前に最新状態にする
- 複数のマシンで作業しているとき
- 自宅のPCで作業した内容を会社のPCで続ける場合
- 自分が別の場所からプッシュした変更を取得する
- 定期的な同期作業
- 長期間作業している間の他の変更を取り込む
- プルリクエストを作成する前に最新状態にする
git pullとgit cloneの違いを表で比較
| 項目 | git clone | git pull |
|---|---|---|
| 目的 | リポジトリの初回取得 | 既存リポジトリの更新 |
| 実行場所 | どこでも実行可能 | リポジトリ内でのみ実行 |
| 新規ディレクトリ | 作成する | 作成しない |
| 実行頻度 | プロジェクトごとに1回 | 作業のたびに何度も |
| 前提条件 | なし | 既にclone済みである必要がある |
| 取得内容 | 全履歴とすべてのファイル | 差分(変更部分)のみ |
| 内部動作 | リポジトリの完全コピー | fetch + merge |
典型的なワークフロー例
実際の開発では、以下のような流れでgit cloneとgit pullを使い分けます。
1. プロジェクトへの初回参加
# 最初の1回だけ:リポジトリをクローン
cd ~/projects
git clone https://github.com/team/project.git
cd project
# 開発環境のセットアップ
npm install # または必要な初期化コマンド
2. 日々の開発作業
# 作業開始前:最新状態に更新
git pull origin main
# 作業用ブランチを作成
git checkout -b feature/new-function
# コードを編集...
# 変更をコミット
git add .
git commit -m "新機能を追加"
# リモートにプッシュ
git push origin feature/new-function
3. 長期間のブランチ作業
# 作業中のブランチで定期的に最新を取り込む
git checkout feature/long-term-work
git pull origin main # mainブランチの最新を取り込む
# コンフリクトが発生した場合は解決
# 解決後、作業を続ける
よくある間違いと注意点
間違い1:既にcloneしたディレクトリで再度cloneしようとする
# ❌ 間違い
cd existing-project
git clone https://github.com/team/project.git
# ✅ 正しい
cd existing-project
git pull
間違い2:cloneしていないのにpullしようとする
# ❌ 間違い(cloneしていない状態で)
cd ~/projects
git pull https://github.com/team/project.git
# エラー:fatal: not a git repository
# ✅ 正しい(まずcloneする)
cd ~/projects
git clone https://github.com/team/project.git
cd project
git pull
注意点1:git pullの前にローカル変更をコミットする
git pullを実行する前に、ローカルの変更をコミットしておくことが推奨されます。未コミットの変更があると、マージ時にコンフリクトが発生する可能性があります。
# 作業中の変更を確認
git status
# 変更がある場合はコミット
git add .
git commit -m "作業中の変更を保存"
# その後にpull
git pull
注意点2:git pullでコンフリクトが発生した場合
リモートの変更とローカルの変更が競合すると、コンフリクトが発生します。
# pullでコンフリクトが発生
git pull origin main
# コンフリクトしたファイルを手動で編集
# <<<<<<<、=======、>>>>>>> のマーカーを削除して内容を統合
# 解決後にコミット
git add .
git commit -m "コンフリクトを解決"
git fetchとの関係
git pullを理解するために、git fetchも知っておくと便利です。
# git pullは以下の2つのコマンドを同時に実行している
git fetch origin # リモートの変更を取得(マージはしない)
git merge origin/main # 取得した変更をマージ
# より安全な方法:まずfetchで確認してからmerge
git fetch origin
git log origin/main # 何が変更されたか確認
git merge origin/main # 問題なければマージ
まとめ
- git cloneは「リポジトリの初回ダウンロード」に使う
- git pullは「既存リポジトリの更新」に使う
- cloneは各プロジェクトで1回だけ、pullは作業のたびに何度も使う
- 作業を始める前には必ずpullして最新状態にする習慣をつける
- pullの前にローカル変更をコミットしておくと安全
これらの違いを理解して正しく使い分けることで、スムーズなGit運用ができるようになります。チーム開発では特に、定期的なgit pullによる同期が重要です。


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